映画キングダム 雑感(2019/5/15)

この記事は多分な偏見に満ちた個人の感想であり、映画キングダムやそのファンを否定するつもりは一切ありません。
 
 
◆自分語り
 
 
先日映画キングダムを見た。
 
一応知らない人のために説明しておくと、映画キングダムは興行収入が何十億円超だとか、圧倒的大スケールの映像だとか、人気俳優揃い踏みの話題作であるとか。
まあそういった宣伝文句の映画である。
 
山崎賢人が主役を務める漫画原作の実写映画といえばもっとわかりやすいだろうか。
 
 
言ってしまえば見るからにくだらなそ~な映画だな。という印象だった。
 
くだらない映画というのは言い方が悪いかもしれないが、つまり映画そのものの出来を期待するものではないということだ。
イケメン俳優とかわいい女優のお遊戯会を見たい人のために、コケない程度の脚本を適当に消費する。興行収入いっぱいでよかったね、みたいな。
 
そして少なくとも観る前までは、キングダムもそのタイプだと思っていた。ここまでは偏見である。観てもいないのに印象でモノを語っているのだから、偏見そのものである。
 
 
 
では観た後は?
 
……
 
はいやっぱりね。
これは偏見ではなく感想だ。私にとってのこの映画の最も大きな価値は、偏見通りのモノを見せつけられて「やっぱりね」とニヤつきながら世界にマウントを取った気にさせてくれたことであり、後述する何点かを除きそれでしかなかった。
 
予想通りの下らない映画であったことに多少の喜びと、それ以上の虚しさを覚える。
話題作ならばなんだかんだ言っても面白いのではという期待がどこかにあったのだろう。
 
 
というわけでなんだかモヤモヤするので、ここに文章として記すことで思いを昇華させようと思う。前置き終わり!
 
 
 
 
◆面白くないのはなぜか?
 
はい。散々つまらん映画だと言ってきたが、なんでつまらなく映ったのかということについて考えていきたい。
 
結論から言う。
 
熱いシーンが熱くない
 
これに尽きる。
 
キングダムは熱い物語である。
 
熱い物語には、熱さに足るだけの説得力がなくてはいけない。脚本とか演技とか演出とかカメラワークとか音楽とか、そういったものを駆使して観客を納得させなくてはいけない。
 
説得力のない熱さは、文字通り寒い。
 
キングダムに関して言うならば、熱くしようという努力すらあまり感じられないほどで、寒くすらなかった。
そういう層がターゲットの映画だから、まあそれでよいのだろうけど。
 
 
顕著なのが、山崎賢人の演技だ。というかこれが俺の不満のほぼ全てであると言っていい。
 
山崎賢人の演じる主人公信は、この映画において二つの役割を担っている。
 
一つは熱い志とそれに足る背景をもって、大きな目標に向かって邁進する少年漫画の主人公的な役割。
もう一つは、奴隷出身でありながら国王周辺のゴタゴタに巻き込まれるいわば「視聴者の視点」としての役割だ。
 
一護が死神代行として死神界の常識をルキアに教わるように、異世界転生モノの主人公がTUEEEの過程で異世界のあり方を明らかにするように。状況の外の人間が我々の持つ「?」を声にしてくれることで、物語がスムーズに進むというよくある図式である。
 
 
では山崎賢人は二つの役割をこなせていたか?
 
 
 
こなしていた。へっっっっっったくそに
 
 
とにかく何もかもがわざとらしい。
 
熱いシーンで熱いこと思ってて熱いこと言ってるぞ!という顔で、熱い演技をする。表面でしか演技をしていない。
それを熱いと思って見てもらえると思っているのだろうか。客ナメてんだろ。 
 
 
それがよく表れていると思ったのが、漂が政の囮として死んだと理解したシーン
 
「わかってきた………わかって、きたぞ。漂は、漂はお前の身代わりになって死んだんだ!!!!」
 
みたいなセリフだったと思う。
これを怒っている顔と声で、拳に力を入れ、感情たっぷりに演技なさった。
 
こんな説明口調なセリフを。
 
いやまず思っても言わねえだろそんなこと心の中で思っておけよなんで確認してんだよ。
 
セリフとか見せ方云々の話になってしまったが、やっぱり演技が下手なのだ。
叫んではいても、怒りは伝わってこなかった。下手だから、セリフと感情の温度差ばかりが気になってしまう。
 
 
俺は信!バカで育ちは貧しいけど、熱い想いと鍛えた力で夢を叶えてやるぜ!
 
みたいな役の認識で演技をしている。
 
というか、外からそう見えるように演技をしているなと思った。内側からキャラを滲ませようというよりは、こうしたらキャラっぽく見えるだろ?みたいな。
 
これで合ってるでしょ?ってこっちをチラチラ見てくるような演技である。
 
 
そのせいで熱いはずのシーンが全く熱くない。
セリフ回しだったり演技の雰囲気は山崎賢人というよりはそれにOKを出した制作側の問題なのかもしれないけれど、他の人と比べても山崎賢人が抜けてひどかったので、彼が悪いんだと思う。
 
後述するけど吉沢亮だったり本郷奏多は、なかなかキャラの魅力を感じられる演技をしていたから。
 
 
主人公の怒り、戸惑い、決意。その何もかもが表面的で薄っぺらい。
そんな映画が面白いわけねえだろ。以上。
(ちなみに山崎賢人の顔は好き。)
 
 
ついでに推しているアクションシーンについて。
 
とにかくあまりにもワイヤー。ワイヤーですごい動きするのはいいけど、ワイヤーが見えないようにやってほしい。
 
あと改造人間みたいな敵がいるんだけど、ストリートファイターみたいなモデルでストリートファイターみたいな攻撃するから笑ってしまった。
 
 
 
 
◆面白かったとこ
 
ボロクソ言ってきたが、もちろん面白かったところもあった。
 
 
まずはなんといっても大沢たかおさんの王騎。これはすごかった。
王騎はキングダムのキャラの中でもかなり実写化の難しいキャラだ。信が一目見ただけで天下の大将軍を目指そうと決意するだけのキャラであり、ロクに時間も割けないサブキャラなのに観客にそれを納得させなければいけない。それに足るだけの貫禄が必要なキャラである。
そしてそれは成った。俺も天下の大将軍になりたくなったもん。
 
 
次。吉沢亮がイケメン。
純粋に顔がいい。だけでなく、顔のよさに見合った演技ができていて好印象だった。漂と政のイメージにも合うし。
この映画で私が唯一熱くなったのも、吉沢亮の演じる政が仲間を鼓舞するシーンだった。よいね。
 
 
次。橋本環奈が何もしない。
良くも悪くも露骨に客寄せパンダ扱いだった。橋本環奈が出てる!?しかもあの河了貂!?というインパクトのためだけに起用されたとしか思えない。
物語に影響したり熱い想いの込められたセリフは一つもない。状況説明と、信がピンチの時に信!と叫ぶだけである。
そしてこれは英断だったと思う。俺らだってたまに画面にハシカンが映ればそれでいいのだ。演技に期待してる人はあんまりいないと思うし、変にプッシュしないのは正解だった。まあ河了貂が誰であろうと何かする役になったとも思えないので、最大限パンダを起用できたキャスト選択がナイス。
 
 
次。映像の雰囲気
大スケールというだけあって、背景やらセットはすごかった。他の映画と比べてどのくらいなのかは知らないけど。
 
 
 
 
◆映画キングダムの価値
 
散々こき下ろしてきたが、総合的に見て結局映画館で見るべきか?という話
 
・キャストが豪華なのはまぎれもない事実である。
・まあまあ話題作だから人との会話のネタにはなる。
・ノセアンチの方は、この映画を見て面白さを発掘することで、ノセの審美眼のなさにマウントを取ることができる。
 
この3点に価値を見出せる人は、見ればいいと思う。
 
そうじゃないなら見なければいいと思う。終わり!